大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和42年(オ)549号 判決 1968年2月01日

上告人

加藤ジユウ

(ほか一〇名)

右一一名訴訟代理人

和久井四郎

被上告人

大竹善一

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人和久井四郎の上告理由第一点について。

文書提出の申立については、裁判所は必ず申立の当否を判断しなければならないものであり、文書提出の申立につき、裁判しないままで、本案事件の口頭弁論を終結して判決を言い渡すことが違法であることは、当裁判所の判例とするところである(最高裁判所昭和二七年(オ)第一〇一九号、同三〇年三月二四日第一小法廷判決、民集九巻三号三五七頁)。しかしながら、右申立については、裁判所は必ずしも明示的に裁判しなければならないものではなく、黙示的にすることも許されるものと解すべきである。ところで、本件記録によれば、本件文書提出の申立については、原審裁判所はこれを許すべきでないと認めて暗黙に却下したものであることが、その審理の経過に徴してうかがわれるから、この申立について何らの裁判をしなかつたのは違法であるとする所論は理由がないといわなければならない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第二点について。

原判決は、所論の点に関する乙一八号証の記載内容は挙示の証拠に照らして採用しがたいといつているのであり、乙一八号証は本田清一郎の検察事務官に対する供述調書であつて、この原判決の趣旨からは、本田清一郎の同趣旨の司法警察員に対する供述調書(乙一五号証)、検察事務官に対する供述調書(乙二〇号証)、司法警察員に対する供述調書(乙二一号証)の記載部分も当然証拠として排斥する趣旨であることがうかがわれるものといわなければならない。したがつて、これを明記しないからとて違法とはいえない。その他、文書提出の申立について裁判しなかつたことを前提とする所論は、前記のとおりその前提を欠くから、理由のないことは明らかである。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第三点について。

被上告人と加藤啓吉の代理人本田清一郎との間にされた一審判決別紙目録記載の(二)の土地の売買が解除されたことを認めるに足りる証拠がない旨の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、注文のとおり判決する。(大隅健一郎 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例